これまでのEMC評価は完成品やモジュール品での評価が主流でしたが、最近は半導体レベルでのノイズ評価を要求されるようになりました。自動車に数多くの半導体デバイスが搭載されるようになり、EMC性能の確保は必須となりつつあります。
また、自動運転やセンサー技術の進化により、より高速なインターフェースを用いた通信が必要となっています。今や車載機器に対する半導体EMC評価は無視できない存在です。
そこで今回は、㈱デンケンが評価実績のあるJASO D019(自動車用半導体EMC性能等価性試験法)に対応した半導体EMC試験(DPI試験、VDE試験(150Ω法))についてのお話をしたいと思います。
「半導体の性能を把握したいけど、規格番号はわかるのに試験の内容がわからない」、納入先から「EMC試験を実施するように言われた」など、そうした悩みを解決します。
Contents
EMC試験とは
EMC試験とは、電気・電子機器の製品化や海外展開へ向けた認証適合に必要となる規格試験です。
半導体は、電磁波を発生(EMI:エミッション)して他の電子機器の誤作動を招いたり、逆に他の機器から発生する電磁波を受け(EMS:イミュニティ)機能障害をおこすことがあります。
電気・電子製品の製品化や海外展開の際に必要な国内外の認証に適合するためには、他の電子機器が発生する電磁波による影響を受けたりした場合、その電磁波障害によって誤動作しないかEMC試験を受けなければいけません。
半導体のEMC規格
近年、車載を中心に電磁波ノイズによる電子機器の誤作動防止が安全確保の観点から最重要事項として挙げられています。
そこで電磁波の発生による悪影響を与えないことを確認する「エミッション(EMI)測定」と、電磁波による影響を受けない機能をもっているかを確認する「イミュニティ(EMS)試験」を受けることが評価項目となっています。
半導体のEMC規格には、以下のようなものがあります。代表的なエミッション規格としてIEC 61967シリーズ、イミュニティ規格としては、IEC 62132シリーズがあります。
IEC 61967シリーズ(エミッション規格)
規格番号 | 試験方法 | 概要 |
IEC 61967-1 | General conditions and definitions | 用語の定義、評価基板の作成ルール |
IEC 61967-2 | TEM-Cell and Wideband TEM-Cell Method | TEMセル、またはGTEMセルを用いて、ICからの電磁界を測定 |
IEC 61967-3 | Surface scan method | 電磁界プローブを用いて、ICの近傍電磁界を測定 |
IEC 61967-4 | 1Ω/150Ω direct coupling method | クラウンドのリターン電流、またはポートの電圧を測定 |
IEC 61967-5 | Workbench Faraday Cage method | Workbench Faraday Cage(WBFC)を用いて、WBFCのグラウンドとIC間のコモンモード電圧を測定 |
IEC 61967-6 | Magnetic probe method | 磁界プローブを用いて、ポートの電流を計測 |
IEC 61967-8 | IC strip line method | 開放型ストリップラインを用いて、ICからの電磁界を測定 |
IEC 62132シリーズ(イミュニティ規格)
規格番号 | 試験方法 | 概要 |
IEC 62132-1 | General conditions and definitions | 用語の定義、評価基板の作成ルール |
IEC 62132-2 | TEM-Cell and Wideband TEM-Cell Method | TEMセル、またはGTEMセルを用いて、ICからの電磁界を測定 |
IEC 62132-3 | Bulk Current Injection(BCI) method | BCIプローブを用いて、ポートに電流を注入 |
IEC 62132-4 | Direct RF power injection method | 容量性結合により、ポートに電流を注入 |
IEC 62132-5 | Workbench Faraday Cage method | Workbench Faraday Cage(WBFC)を用いて、WBFCのグラウンドとIC間のコモンモード電圧を測定 |
IEC 62132-8 | IC strip line method | 開放型ストリップラインを用いて、ICからの電磁界を測定 |
IEC 62132-4(伝導性イミュニティ評価:DPI法)とは
IEC 62132シリーズ(イミュニティ規格)の1つにIEC 62132-4(DPI法)があります。
DPI法とはDirect Power Injection methodの略で、ICの各端子に容量性結合でノイズを直接注入し、誤動作の有無を確認する試験方法です。
この試験は、試験周波数毎に試験レベル(電力)を段階的に上げていき、その都度に半導体(IC)の性能確認を実施する必要があります。また、誤動作発生時にはその誤操作状態を記録する必要があり、大変な手間と時間が掛かります。
IEC 61967-4(伝導性エミッション評価:VDE法(1Ω/150Ω法)とは
IEC 61967シリーズ(エミッション規格)の1つにIEC 61967-4(VDE法)があります。VDE 法では、電源、信号、GND(グランド)の伝導ノイズを測定する試験方法です。
1Ω法は、デバイスのグラウンドのリターン配線に1Ω抵抗を直列に挿入し、電圧降下から電流値を測定する方法です。
150Ω法は、線路のインピーダンスを150Ωに設定してグランドとの電位差を測定する方法です。
JASO D019とは
JASO D019とは「自動車用半導体EMC性能等価性試験法」のことです。
自動車用途の半導体製品に工程変更(PCN)などが生じた際に、PCNの前後における半導体製品単体のEMC性能の等価性を確認することで、車両EMC性能の等価性判定できるケースが策定されました。
まとめ
- 車載機器、車両のEMC規格が存在する
- 半導体レベルでもEMC評価を求められるようになった
- 自動車業界ではJASO D019が規格化され、IEC 62132-4(DPI法)やIEC 61967-4(VDE法)のEMC評価規格が参照されている
近年、車両の電子化にともない、1つの車両に多数の車載機器が搭載されており、半導体・車載機器・車両の各製品においてEMC規格が存在します。
電磁波ノイズは、電子機器の誤作動や通信機器の障害だけでなく、人体への影響もあるとされており、半導体レベルでもEMC性能の評価が求められることが増えています。特に車載半導体では、EMC試験の重要性が高まっています。
自動車業界では、JASO D019(自動車用半導体EMC性能等価性試験法)が規格化され、運用がスタートしています。この等価性評価にIEC 62132-4(DPI法)やIEC 61967-4(VDE法)のEMC評価規格が参照されています。
これからは、信頼性のあるデータを顧客へ提供することがより一層求められるはずです。
デンケンにできること
デンケンでは、JASO D019(自動車用半導体EMC性能等価性試験法)に対応した半導体EMC試験(DPI試験、VDE試験(150Ω法))の評価実績があります。
PCNの前後における半導体製品単体のEMC性能の等価性を確認することで、自動車メーカー、自動車部品メーカーや半導体メーカーの省略化が期待できます。
今春、JAMA(自動車工業会)に提出した弊社の測定結果が採用された実績を持っております。
過去の実例
デンケンでは、測定結果のアウトプットとして報告書を作成します。以下は、報告書情報の一部抜粋になります。
電源DPI試験条件_例
電源DPI試験回路_例
入力DPI試験条件_例
入力DPI試験回路_例
等価性評価による耐量リスト_例