自動車はときに人の命を左右する乗り物です。一つの誤作動が大事故につながるケースも珍しくありません。そのため、EMC性能が非常に厳しく管理されています。
特に近年、車両の電子化が進んだことで、「車載半導体のEMC試験」を求められることが増えてきました。
EMC性能の管理は非常に難しいものであり、どんなに厳正な試験を行っても不具合がなくなることはありません。実際、試験をクリアして市場に出回った自動車に関しても、EMC関連の不具合が多数報告されています。
自動車関連のEMC試験を得意とするデンケンもその重要性を社員全員で共有し、「高い技術の提供」「正確な試験」を行うために、社内でも厳しい教育体制を整えています。
今回は私どもデンケンが対応している
- 自動車関連のEMC規格について
- 半導体のEMC試験について
- デンケンでEMC試験を行うメリット
- デンケンで自動車のEMC試験を受ける際の流れ
について詳しく解説させていただきます。
Contents
デンケンが対応する自動車関連のEMC規格・試験
自動車は車両に多数の車載機器が搭載されており、完成車だけでなく、車載機器の各製品においてEMC規格が存在し、それぞれでEMC試験を実施する必要があります。
さらに、先述したように自動車の電子化が進んだ結果、近年は半導体レベルでもEMC評価を求められるようになりました。
自動車関連のEMC試験は大きく分けて「実車試験」、「部品試験」、部品試験の中に含まれる「半導体試験」があります。
デンケンはこのうち「部品試験」と「半導体試験」に対応しています。
IEC/ISO17025認定試験
【車載EMC】
ISO10605 | 静電気 |
ISO11452-2 | アンテナ照射 |
ISO11452-4 | BCI |
ISO11452-8 | 磁界イミュニティ |
ISO11452-9 | 近接放射イミュニティ試験法 |
ISO16750-2 | 電気負荷 |
ISO7637-2 | 過渡伝導(イミュニティ) |
ISO7637-2 | 過渡伝導(エミッション) |
ISO7637-3 | クランプ法(CCC法) |
ISO7637-3 | 直接容量結合法(DCC法) |
CISPR25 | 伝導エミッション |
CISPR25 | 放射エミッション |
【半導体EMC】
IEC62132-4 | DPI法 |
IEC62132-4 | 150Ω法 |
JASO D 019 | DPI法、150Ω法 |
JEITA ED-5008 | DPI法、150Ω法 |
各種規格・試験
【IEC61000】
4-2 | 静電気放電イミュニティ試験 |
4-3 | 放射無線周波数電磁界イミュニティ試験(距離に制限あり) |
4-4 | ファストトランジェント/バースト イミュニティ試験 |
4-5 | 雷サージイミュニティ試験 |
4-6 | 伝導イミュニティ |
4-8 | 磁界イミュニティ試験 |
全国的にも対応サイトが稀な「半導体試験」も行います
自動車に数多くの半導体デバイスが搭載されるようになった昨今、EMC性能の確保は必須となりつつあります。
昨年5月に「JASO D019(自動車用半導体EMC性能等価性試験法)」が規格化されて以降、その注目度はますます高まっているといえるでしょう。
しかし、現在、半導体試験に対応できる独立試験サイトは全国的に見てもほとんどありません。
デンケンは半導体において40年以上の実績を持ち、「JASO D019(自動車用半導体EMC性能等価性試験法)」の規格の暫定版を基に測定のお手伝いを、規格制定のために評価のお手伝いを※1をさせていただきました。
もちろん、「半導体のEMC試験」にも対応しています。
※1. 2021年春、JAMA(自動車工業会)に提出した弊社の測定結果が採用されました。
半導体EMC等価性の評価事例の紹介【前編】
JASO D019(自動車用半導体EMC性能等価性試験法)規格化への流れ
JASO D019は2021年5月、「ユニット(製品を組み込んだ状態)試験の省略化」を目的として、規格化されました。
部品を変更する際、製品によっては再度EMC評価を求められることがあります。しかし、EMC試験には膨大な手間と時間が必要であり、設計者の負担が問題になっていました。
特に、数え切れないほど多くの部品を積んでいる自動車における負担の大きさは言うまでもありません。実際、PCN(工程変更)の度に頭を悩ませていた人も多いのではないでしょうか。
そのため、半導体製品単体のEMC性能の等価性を確認することで、車両EMC性能の等価性判定ができるケースが策定されました。それが「JASO D019」の規格化です。
JASO D019によって等価比較のスタンダードができたので、今後車載で使用されていく事が多くなると考えられます。
PCN(工程変更)等でEMCの再評価が求められると、再度EMC試験が必要となり、設計者の負担が増える
↓
そのため、試験の省略化のために半導体に着目し、評価法の規格化が進められる。
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半導体の評価法JEITA ED-5008(半導体EMC性能等価性評価法)が規格化され
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JAMA日本自動車工業会でも「設計者の検証工数を簡素化しよう」という動きがあり、JEITA ED-5008をもとにJASO D019(自動車用半導体EMC性能等価性試験法)が規格化される
JASO D019には以下の2つの規格が参照されています
○ IEC 62132-4(伝導性イミュニティ評価:DPI法)
IEC 62132シリーズ(イミュニティ規格)の1つにIEC 62132-4(DPI法)があります。
DPI法とはDirect Power Injection methodの略で、ICの各端子に容量性結合でノイズを直接注入し、誤動作の有無を確認する試験方法です。
この試験は、試験周波数毎に試験レベル(電力)を段階的に上げていき、その都度に半導体(IC)の性能確認を実施する必要があります。また、誤動作発生時にはその誤操作状態を記録する必要があり、大変な手間と時間が掛かります。
○ IEC 61967-4(伝導性エミッション評価:VDE法(1Ω/150Ω法)
EC 61967シリーズ(エミッション規格)の1つにIEC 61967-4(VDE法)があります。VDE 法では、電源、信号、GND(グランド)の伝導ノイズを測定する試験方法です。
1Ω法は、デバイスのグラウンドのリターン配線に1Ω抵抗を直列に挿入し、電圧降下から電流値を測定する方法です。
150Ω法は、線路のインピーダンスを150Ωに設定してグランドとの電位差を測定する方法です。
デンケンでは、JASO D019(自動車用半導体EMC性能等価性試験法)に対応した半導体EMC試験(DPI試験、VDE試験(150Ω法))の評価実績があります。
半導体EMC試験(DPI試験、VDE試験)評価はデンケンにお任せください
デンケンで自動車のEMC試験を受けるメリット
私たちデンケンは、自動車関連のEMC試験を数多くこなし、豊富な経験と実績を持っています。
「技術の高さ」はもちろん、「自動車におけるEMC性能管理の重要性の理解」「自分たちの仕事が“人の命を左右することもある”という責任感」、「お客様に寄り添う心」はどこにも負けないと自負しています。
そして、それらがデンケンでEMC試験を受けることのメリットにつながっていると考えています。
①信頼の証「iNARTE (アイナルテ)」保有者など、高い技術を持つ社員が対応します
自動車関連のEMC試験では絶対にミスが許されません。一つでも評価に誤りがあれば動作不良を起こし、大事故につながる恐れがあるからです。
そのためデンケンの社員は“人命を左右する部分を担っている”ということを常に意識し、慎重かつ誠実に業務に当たっています。
そうした目に見える信頼の証として、私たちは社員の「iNARTE」資格取得に力を入れています。
※現時点では全スタッフ取得には至っていませんが、毎週勉強会を行い、着実に資格保有者を増やしています。
iNARTEとは
iNARTE (アイナルテ)は、アメリカの非営利団体であるiNARTE(International Association for Radio, Telecommunications and Electromagnetics)が、1988年に創設した、EMCの技術、スキルを認証するグローバルな技術資格です。
一般社団法人KEC関西電子工業振興センター(以下KEC)がiNARTEと提携し、1998年 に「iNARTE EMC Engineer(技術者)」、2001年 「iNARTE EMC Technician(技能者)」の資格制度を日本に導入しました。
受験者はある程度経験を積んだ技術者・技能者に限られますが、それでも合格率が3割を切ることも多い、難易度の高い資格です。
iNARTE資格を取得することは、EMCの知識・能力の客観的な証明と判断に有用であることから、試験サイトを選ぶ際の大きな判断材料になっています。
②ご希望に応じて、デンケン社員が試験を代行します
EMCの試験サイトは、部屋や機材を提供して「あとはお好きに使ってください」という、いわゆる”部屋貸し”のところがほとんどです。
もちろんデンケンも”部屋貸し”を行っていますが、ご希望に応じてデンケン社員が試験を代行することも可能です。
試験の代行はお客様にとって、手間が省けるや、より正確な試験ができるなどのメリットがあります。
デンケンにとって試験代行はある意味リスクを負うことと同義です。代行する以上、何かあった場合その責任はデンケンに帰属するからです。
それでも代行を積極的に行うのは、「高い技術をお客様に提供したい(=人の命を左右する重要な試験を行う企業として責任を果たしたい)」という強い想いがあるからに他なりません。
もちろんリスク以上に「社員の経験値が上がる」というメリットも感じています。多くの試験を代行し、経験を積んだ社員の成長速度はどこよりも早いと自負しています。
試験代行によって生まれるメリット
- 社員の経験値アップ
- 社員のスキルアップ
- より良い技術が提供できるようになる
- より正確な代行試験ができるようになる
↓
そのことで、より高いレベルで社会的責任を果たすことができる。
③24時間体制で試験を行います。急ぎの案件もお任せください
デンケンでは、弊社スタッフが代行して24時間体制で試験を行うことができます。
例えば、通常10日かかる試験を24時間体制で行うことによって、半分の5日で終わらせることも可能です。
状況に応じて細やかに対応しますので、まずはお気軽にご相談ください。
④半導体試験もお任せください
先述した通り、デンケンは全国的にも珍しいEMCの半導体試験ができる試験サイトです。
⑤快適な環境で試験ができます
皆様が快適な環境でストレスなく試験が行えるよう、お車での送迎や、お客様専用の待合室もご利用いただけます。
デンケンでEMC試験を受ける際の流れ
デンケンでEMC試験を受ける際の流れを、以下4つのカテゴリーに分けてご説明します。
- 試験前の事務手続き
- 試験準備
- 試験
- 納品
①試験前の事務手続き
- 試験希望のご連絡
ご連絡の際、試験内容の詳細をお知らせください。対応可能かどうか検討いたします。
※部屋の空き状況はコチラより24時間いつでも確認いただけます。
- 依頼内容展開
所定の用紙(テストプラン)に規格・試験の詳細等を記入し、デンケンへお送りください。試験準備(書類等)を進めます。
※テストプラン用紙はコチラよりダウンロード可能です。
- お見積もり確認
内容を基に見積りを実施します。
お見積もりをご提案させていただきます。
- 正式な試験依頼
正式にご依頼をいただき、受付(受理)した段階で契約成立となります。
②試験準備
- 試験機器のご準備・引き渡し
試験機器のご準備、デンケンへの引き渡しをお願いいたします。
- 試験内容の打ち合わせ
試験内容の詳細を話し合います。ご意見・ご要望があれば、お気軽にお伝えください。その後、デンケン側で打ち合わせ内容に沿った試験環境のセッティングを行います。
- 試験環境の確認
Web上に試験環境を撮影した写真をアップいたしますので、ご確認ください。
③試験(試験代行する場合)
- 試験開始
試験を開始します。
- 試験の進捗状況の共有
不測の事態、トラブルが発生した場合、迅速に対応いたします。
- 試験終了の確認
試験終了をお客様、デンケン双方で確認します。
- 撤収連絡
撤収前にご連絡ください。
- 使用機器の受け取り
デンケンが後片付けを行い、使用機器をご返却いたします。
④納品
- 納品データ受領
デンケンが諸々の処理を行い、データを納品いたします。
- 納品データ受領連絡
納品データを受け取った後、その旨ご連絡ください。
まとめ
全国にEMCの試験サイトは数多くあります。料金、サービス、設備、技術、実績、何を基準に選ぶのかはそれぞれですが、私たちはそこに試験を請け負う側の“想い”や“姿勢”も加えてほしいと考えています。
デンケンは、自分たちの仕事が「人命を左右する部分を担っている」ということを常に意識し、慎重かつ誠実に業務を遂行することをお約束します。
<デンケンの特徴>
- 自動車関連のEMC試験を得意としています
- 全国的にも珍しい半導体EMC試験にもできます
- iNARTE (アイナルテ)保有者など、高い技術を持つ社員が対応いたします
- ご希望に応じて、デンケン社員が試験を代行します
- 24時間体制で試験可能です
- 送迎などのサービスもご用意しています